3Dプリント二等輸送艦を作る(2) 実は二種類あります
上が『第101号型』、下が『第103号型』です。
艦の真ん中あたりが違います。
(実際は一番艦でも三番艦でもないんですが、それは後述)
これは米軍が1945年に行った調査報告書に記載されている二等輸送艦の図面です。(wikipediaの第百三号型輸送艦のページに同じものが載せられています)
上が103号型、下が101号型です。
こいつで違いを見てみましょう。
BILER ROOM
左が101号型、右が103号型です。
103号型の機関は蒸気タービンなので、艦橋の下にボイラーが2基あり、ここから斜めに煙突が伸びています。
101号型の機関はディーゼルなので、ボイラーはなく、ボイラー室のスペースはTROOP QUARTERS(兵員宿舎)となっています。
101号型は103号型に比べて沢山の兵隊さんを輸送できます。ここだけで120MENです。
ENGINE ROOM
101号型はディーゼルエンジンが3機、エンジンの上に煙突を設けています。
煙突に向かって斜めに伸びているのは、GALLEY STACK(調理室の煙突)です。
エンジンの煙突が後方にあるので、調理室(軍の呼び方的には烹炊室)の煙突も束ねて排気しています。
烹炊煙突を機関の煙突まで伸ばすのは駆逐艦など他の艦でもよくみる形式です。
103号型は蒸気タービン1機です。
煙突が前方にあって遠いため、烹炊煙突はすぐ上にあるマストに取り付けられています。(図面にはありません)
101号型はディーゼル3機の3軸、103号型はタービン1機の1軸での推進です。
なんとなく3軸の方がすごい気がしますが、そうではなくスクリューの大きさがまるで違います。
ディーゼルは1機400馬力で合計1200馬力なのに対し、タービンは1機で2500馬力!。すげぇな蒸気タービン。
(※旧海軍の一般計画要領書には2500馬力と記載されていますが、上述の米軍調査報告書には2100馬力と記載されており一致していません)
馬力の差は速力の差になり、計画速度は101号型が13.4ノット、103号型が16ノット、公試では17ノットを記録しているそうです。
馬力は無いけど燃費がいいのがディーゼル、航続距離は101号型が3000海里、103号が2700海里です。
STERN WINDLASS
甲板上では、なぜかSTERN WINDLASS(船尾 いかり巻き上げ機)が違うものになっています。
このため、103号型は中央にある艦尾錨が、101号型ではなぜか左舷に寄って配置されています。理由はまったくわかりません。
以上のように二種類ある二等輸送艦ですが、69隻中101号型は6隻しかありません。
上の写真は6隻しかない101号型が4隻並んでいる写真です。
甲板に干してある洗濯物がいい味だしてます。
6隻しかないのは、実は103号型が設計された本来唯一の型式だったはずが、タービン機関の生産が間に合わず、初期生産の6隻のみがディーゼル機関に変更されて建造されたからです。
この話は上述の米軍の調査報告書に次のように記載されています。すげぇな米軍。
Since the completion of these craft was not up to expectation, due to poor delivery of the turbines, another modification was developed using the same hull and three 400 bhp diesels on three shafts.
そんな101号型は次の6隻です。
101号、102号、127号、128号、149号、150号
え?タービンが間に合わなかった最初の6隻じゃないの?なんで飛び番?と思いますよね。
この記事の最初に101号が一番艦、103号が三番艦ではないと書いた理由もここにあります。
二等輸送艦は主に3つの造船所で建造されました。
造船所ごとにあらかじめ番号が割り振られていたのです。
101号~大阪造船所
127号~川南工業浦崎造船所
この3つの造船所でそれぞれ最初に作られた2隻が101号型なのです。
他の艦の例だと、竣工日が最初の艦がネームシップになりますが、こういう場合はそうでないみたいですね(笑)
これは映画『男たちの大和』のロケセットの写真です。
(こちらのサイトより引用させていただいております)
背景の山がそっくりですね。
これで、大和の沖縄特攻のときに、艦隊とすれちがって、大和と無線で答礼した大島輸送隊の二等輸送艦がこの日立造船建造だったら大興奮のシナリオだったのですが、そんなミラクルはなく、佐賀県の川南工業浦崎造船所建造の船だったのでした(笑)
(川南造船所は廃墟マニアにはホットな場所だったみたいですが、現在はその廃墟も無いらしいです)
さて、吾輩の郷土愛で話がそれちまいましたが、今回作るのは103号型です。
理由は…1軸だから!
この大きさの船で1/200の3軸とか、ラジコン化する人間には悪夢でしかありません(^^;
そして上の写真です。
103号型にはみょうに煙突が長いやつがいるのです。なんかかっこ悪いぞ…
大戦末期、日本は深刻な燃料不足状態でした。そこで重油のボイラーを石炭に変えたのが煙突の長い103号型の正体です。
吾輩的にはかっこ悪いので却下だ!
おまけでもうひとつ。
煙突長い上に奇妙な塗装の二等輸送艦。迷彩なんだろうか…
以上のような、様々な思いが吾輩の中で渦巻きながらモデリングが始まっておりますです。
追記:
二等輸送艦は離岸するとき、逆進するとともに、先に落としておいた後部アンカーを巻き取って後ろに進む力とするように設計されています。
しかし吾輩、101号型だけの、図の下のラインが最初なんだか理解できなかったのですが、Lt_Goldman68さんの、101号型は馬力不足かもという指摘で頭の上に電球がともりましたよ。
この下のラインは、離岸に失敗したときに、沖にいる別の船と結んで、それを引っ張って離岸するための保険なのかも?
103号型も、保険のラインがあったら助かったかも、とか妄想が膨らみます。
が、このとき生き残り、大和とすれ違った二等輸送艦も、最終的には潜水艦に撃沈されておりますので、個々の頑張りはバカな上層部の前では結果には寄与しないのかもしれません。ほんと空しいものです。